トップページ > 古本の寿命

古本の寿命

 物理学的に何事も永遠はないということで、もちろん本にも寿命があります。それでは古本はどのくらいの寿命を持っているのでしょうか。もちろん保存状態などにも左右されますが、一番重要なのは本を構成するパーツの中で一番大きい紙の寿命が、本の寿命です。
 一般的に、和紙の寿命は1000年といわれています。洋紙は100年といいますから、いかに和紙が丈夫か分かりますね。ですが、多くの和本は1000年の時をわたることができません。和本ののりが虫に食べられてしまい本がぼろぼろになってしまったり、保存状態が悪くかびたり腐敗することもあるからです。
 また、紙の寿命に関しては古い本よりも、実は最近の本は寿命が短いのです。週刊誌や新聞などに使われている酸性紙という種類の紙は寿命が50年程度、保存状態が悪ければもちろんもっと早くぼろぼろになってしまいます。この酸性紙は、本の劣化が問題になった1990年代まではコストが安くかからないこともあって大量に出回っています。
 酸性紙の寿命が短いことがわかり、最近の書籍は中性紙を使っていますから、こちらは保存状態が良ければ100年は持つことになります。日本で中性紙を使った出版物のほうが多くなったのは2000年以降のことですから、それ以前、大体戦後から2000年にかけて尽きられた本は特に寿命が短くなる計算です。本の寿命が短いということで、最近は中性紙の書籍が多くなっていますが、 中性紙は酸性紙に比較してコスト高なのは間違いありません。長期間保存されることを前提としない本は、今も酸性紙のままなのです。
 最近は電子書籍も増えてきました。こうしたデジタルコンテンツは紙の寿命に左右されませんから寿命は長い、と思われがちですが、再生できるメディアが変化すればいつかは再生できないイコール、電子書籍の寿命はデバイスの寿命、という事も考えられます。ですから紙に印刷された本よりも、実は断然寿命は短いと言われているのです。バックアップが取れない本は、パソコンやスマートフォンが壊れてしまえばそれでお終いなわけですから。 デジタルコンテンツの中古販売は日本では行われていませんが、今後世界的に増えてくると考えられています。そうなると、電子書籍の寿命も今後、もっと長くなっていくかしれません。こちらも著作権の問題が出てきますが、購入する側から見れば、面白くなかった本を誰かに買い取ってもらえるのなら今よりももっと、電子書籍が買いやすくなります。古本の寿命も、今は変わりつつある時期なのです。

↑ PAGE TOP